高次脳機能障害~自立のためのリハビリ~
- sankatsu0901
- 6月3日
- 読了時間: 6分
【はじめに】
退院後のリハビリも入院中と同様に機能訓練ばかりになっていませんか?もちろん継続的なリハビリによる機能の改善は必要であり重要です。長期的に見て徐々に機能が改善していく方もいらっしゃいます。ではその機能が実生活にどのように繋がっていくのかを意識しながら行えていますか?また実生活に即したリハビリはたくさん行えていますか?今回はどのような考えで自立に向けたリハビリに取り組むのか私なりの想いをお伝えしたいと思います。
【社会参加に繋がらない要因】
発症前通りの生活を希望される気持ちは分かります。もちろん希望は元通りの生活だと思います。しかし現実は障害の影響で仕事や人間関係が変化してしまう方が多くいらっしゃいます。この原因のひとつは健常者が前提とされた社会が作られているからです。現在は社会のバリアフリー化や障害者雇用などの制度により、障害を持っていても社会参加しやすい環境へと変化してきているとは思います。しかし実際のところは生産性や知性などを重視されてしまう社会状況に変化はほとんど無いと思います。就職や復職を目指していても、障害者雇用の実態は畑仕事や簡単なリモートワーク。こういった情報を目にすることがよくあります。もちろん就労支援事業を利用して上手く仕事に結びつけられている方もいらっしゃいます。しかし怠けていると見られたり、注意力が無い人と見られたり、どう接したらよいか分からないなど、会社として受け入れ態勢が未だ十分には整っていないと考えられるケースが散見されます。
リハビリに目を向けると現状の保険制度では、リハビリ職が自宅外で十分な時間を確保しサービス提供することが困難です。本来は公共交通機関の利用や就労体験、ボランティア参加など実際の生活場面での介入がもっと必要と考えます。訓練で課題ができることと、社会生活が送れることは異なるのですが…。もっと充実した支援に取り組みたいが、保険制度や雇用状況によって難しく、モヤモヤした思いを持っているセラピストも多く存在しています。
【どのようにして社会に合わせて自立した生活を取り戻していくのか?】
前述したように本来であれば実生活に即した内容のリハビリを積極的に実施しなければなりません。リハビリの内容は機能訓練ばかりになり、機能訓練を行うこと自体が目的になってはいけません。それ自体が日常生活の一部になることで、先に進みづらくなってしまいます。私自身も以前はそのような傾向にある方を多く見てきました。一旦そこへ落ち着くと「本当にしたいこと」になかなか繋がらないケースも見受けられました。また「どうせ無理だから」と諦めてしまっているケースもありました。あくまで機能訓練は目的を達成するためのものです。「話せるようになりたい」のであれば「もう少し話せるようになってから」ではなく、早い段階から友人や職場の方と話す機会を確保する必要があると考えています。話せないから外へ出ないのであれば、いつまで経っても話せるようにはなりません。病前と同じように話せなくてもコミュニケーションはとれます。
「仕事がしたい」のであれば何でも良いのでお金を稼ぐことをしてみる。「元の職場に戻れるようになったら」や、「こんなことはやりたくない」「今までやったことが無いからやらない」ではいつまでたっても出来るようにはなりません。何ができて何ができないのかは挑戦してから判断することも必要と考えます。
当事者にとって厳しいことかもしれませんが、難しいと思っていても行動を起こさなければ社会的自立に向けた目標達成は難しいと考えます。家の中で機能訓練をしていて希望が達成できるのであればそれでも良いと思います。ただし、社会に出て自立した生活を望むのであればかなりの努力が必要なのです。
【実生活に即したリハビリ内容】
退院後のリハビリもしっかりと期限を決めてプランニングすることが必要です。期限を決めなければダラダラと時間を消費する原因にもなります。例えば退院後1ヶ月で生活リズムを整え、3ヵ月で1人で買い物へ行けるようにする。それには何が必要かを細かく評価しリハビリを行います。
下記の図のように日常生活を整えたり、買い物を行う為には様々な機能が必要となります。これらの機能評価や訓練は机上の課題でも可能ではありますが、実際にやってみることで始めて見えてくるものがありますし、何より高次脳機能障害の改善に重要な当事者の気づきを得るために必要な課題となります。


ここで課題を見つけ解決に向け伴走していくべき存在がリハビリ職であると考えています。もちろん実際には多職種と連携し支援に携わりますのでリハビリ職だけですべてをカバーすることは困難です。しかし高次脳機能面に着目し社会参加に向けたコーディネートが行えるのはリハビリ職の強みであると考えています。
【リハビリに対する視点】
一方でなかなか社会参加に繋がらないという状況に陥らないように、社会参加への道筋を説明してリハビリテーションに取り組んでくれるセラピストに当たるかどうかも重要と考えています。どのような組織でも同じかと思いますが、考え方や技量、熱量に差がある人は存在します。残念ながらリハビリ職であっても同様です。ご家族に医療福祉の知識が乏しければ、例え良くないセラピストに当たってしまっても疑問に思うことが無いかもしれません。リハビリを受ける側は情報弱者であることが多いので、残念ながら支援に対して質の差が生じてしまいやすい状況が存在します。
機能訓練に関するテクニックだけでなく、どのような社会資源の活用が有効かのアドバイスをくれるのか?セラピストと1対1だけではなくしっかりと他者や社会へ繋げてくれているのか?そういった視点を少しだけご家族が持っていただけると支援の質は向上すると思います。
【さいごに】
ここまで自立した生活に向けての取り組み方を述べてきましたが、もちろん年齢や疾患、家庭環境などによって自宅で安全に生活することもとても重要なことです。今回はあくまで「自立したい」「友人と遊びに行きたい」「仕事がしたい」といった、自立した社会生活を目標に据えている場合のお話になります。そのような目標を掲げられている方は、いつまでも機能訓練ばかりではただの時間の浪費になってしまいます。やりたいことを後押ししてくれるリハビリ職の方と一緒に、外へ一歩踏み出す勇気を持ってリハビリに取り組んでもらえればと考えております。お読みいただきありがとうございました。




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